Comping

日本では伴奏という意味でバッキング(backing)という言葉がよく用いられますが、欧米ではコンピング(comping)と呼ぶことが多いようです。どちらも意味としては、『ピアノやギターなどの和音を表現できる楽器が、とりわけジャズにおいて、リズム、コード、副旋律(カウンターメロディ)などによってフロント楽器をサポートする』というニュアンスです。基本的にはフロント奏者が心地よく弾ける、またはヴォーカルが気持ち良く歌えることができるならば伴奏に決まりはありませんが、一応、お約束事として基本的な手法を紹介します。

シンプルな伴奏を心がける

ピアノは楽器の性質上沢山の音を鳴らすことができます。そのため複雑なコードも簡単に弾けてしまうので伴奏ではついテンションノートてんこ盛りにしがちなのですが、共演者が伴奏に求めていることは、きちんと曲のコードを鳴らしてくれること、がほとんどです。以下を参考にまずはシンプルなヴォイシングを心がけましょう。

リズム

伴奏のリズムはフォークソングの弾き語りのようにジャン、ジャン、ジャン、ジャンという拍すべてのアタマにコードは入れません(あえて入れることもあります)。基本は2拍と4拍の裏にチャッという感じで歯切れよく弾きます。プロの演奏をよく聞いて雰囲気を真似ることをおすすめします。

ベーシストの存在

ベーシストは88鍵ピアノの左端のEの音から中央左のGの音までの音域を担当します。よってベーシストがバンドにいる場合、ピアニストのヴォイシングはルートレスが基本になります。しかし絶対に弾いてはならないというルールは一切ないのであまり神経質にならないで下さい。

ルートレスヴォイシング

キーCにおけるII-V-I進行の例です。左手は各コードの3度と7度を押さえます。まずはこれをしっかり練習しましょう。

Dm7

G7

CM7

右手の追加

まず5度の音を追加します。次にテンションノートを加えます。バッキングは沢山の音をゴージャスに鳴らすイメージがあるのですが、使用される音数は4音、多くても5音までです。以下最終的な形を紹介します。

Dm9

G7(9)

CM9

少しの変化でジャズっぽさを出す

特にV7、ここではG7において少しだけ音を変化させるとテンションがオルタードテンションとなります。動画も参考にして是非試して下さい。

G7(b9 b13)

IIφ7のバッキング

m7b5コードのバッキングも基本的には同じ方法で作ります。

Dφ7(9)

C69コード

少し特殊なコードもやはり基本は同じです。

C6(9)

ルートヴォイシング

ヴォーカルやサックスとのデュオでのバッキングはソロピアノと同様に全音域でかなり自由に弾くことができます。基本的には左手でベース音を鳴らして、右手でヴォイシングします。右手のヴォイシングはAフォームBフォームが活用できます。ただし、トップノートはメロディの音かもしくはコードトーンを弾くように心がけましょう。フロント楽器もテーマやアドリブを弾きやすくなると思います。

CM9:トップに9thはメロディーを邪魔することがある。(All of meの例)

9thを中音で鳴らし、トップをメロディー(コードトーン)にした。

参考書籍

すぐに使えるキーボード・バッキングまる覚え
楽器のデモ演奏などでよく聴かれる定番バッキング集です。弾くだけでその気にさせてくれます。楽器屋さんでこういうのをサラリと弾くと結構注目されます。ベストセラー書。
ピアノ・コンピング
ATN出版ジャズコンセプションシリーズの最も初級編。プロの演奏に合わせて伴奏が学べます。洋書ですが翻訳書なので日本語で勉強できます。ジャズコンピングが初めての方などにお勧めします。
アート・オブ・ピアノ・コンピング
本物のコンピングとはなにかが学べる良書です。
コード・ヴォイシング・ワークブック
左手のみ、両手のバッキングなどが丁寧に解説されています。
ハウ・トゥ・コンプ
ある程度の基礎を学んだのちに取り組むとこの本の良さがわかると思います。

Poly-Chord

コードにコードを重ねたものをポリコードと呼びます。重ねるコードはメジャーまたはマイナートライアドが多く、これをUpper Structure Triad(アッパーストラクチャートライアド)と呼びます。コードヴォイシングの手法です。

複雑なコードの作成

メジャートライアドのUSTはドミナント7thに追加される事が多く、それぞれ、II III bV bVI VI のトライアドがよく使われます。例えば C7 とAメジャートライアド(VI)の組み合わせは C7(13,b9,3) となります。

C7+AΔ

このようにあるコードの上にトライアドを加えると手軽にテンションを含んだ様々なサウンドが体験できます。バッキングでもソロでも大変利用できます。

[曲のイントロ]

多くの場合、ピアニストにとって伴奏とイントロはセットとなっています。ギターなど、他のコード楽器がいる場合はイントロはそちらに任せてもよいのですが、デュオなどでは基本的にイントロは避けては通れません。イントロはわずか数小節にも関わらず曲のテンポや雰囲気、ヴォーカルにおいては歌い出しの良し悪しを決める大事な要素で、実際イントロ虎の巻など書籍になるほどの技術が必要になります。私もイントロは苦手ですが、いくつかのポイントを紹介します。

曲のメロディーを利用

そもそもイントロで何を弾いたらよいかわからない場合、おすすめするのがその曲の後半のメロディーを弾くことです。ミディアムテンポの曲なら、例えばAll of me, Autumn leavesなどでは十分に使える方法です。

曲のコード進行を利用

曲の後半のコード進行でアドリブをします。II-V-Iのフレーズをそのまま当てはめてもよいと思います。大抵の曲は最後の1小節はテーマの最初のコードへのドミナントセブンスとなっていることが多いので、ドミナントセブンスのコードをしっかり鳴らせれば、他がちぐはぐでもなんとかなります。

D7 G-6G7

枯葉の最後の4小節目をCm7へ向かうドミナント7thとした。

テンポをしっかり出す

ジャズの曲にはそれぞれ原曲のテンポがありますが、基本は演奏者、多くの場合サックスなどのフロント楽器が決めます。指で鳴らしてもらえる場合もあれば体でリズムをとる場合、または「まかせます」など様々です。ピアニストがイントロを弾く場合に大切なのは、フロントの求めるテンポをキープすることはもちろんですが、それ以上に自分がノレるテンポを出すことが大切です。実際、フロント楽器にとっては素晴らしく複雑なコードワークで組み立てられたイントロよりも、しっかりしたリズムでシンプルな和音、そしてドミナントセブンスを鳴らしてもらった方がテーマのメロディへすんなり入りやすい、ということは多々あると思います。

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