Comping

日本では伴奏という意味でバッキング(backing)という言葉がよく用いられますが、欧米ではコンピング(comping)と呼ぶことが多いようです。どちらも意味としては、『ピアノやギターなどの和音を表現できる楽器が、とりわけジャズにおいて、リズム、コード、副旋律(カウンターメロディ)などによってフロント楽器をサポートする』というニュアンスです。基本的にはフロント奏者が心地よく弾ける、またはヴォーカルが気持ち良く歌えることができるならば伴奏に決まりはありませんが、一応、お約束事として基本的な手法を紹介します。

ページ内リンク|曲のイントロ

▶︎動画バッキング練習で確認。

ベースの存在

ベーシストは88鍵ピアノの左端のEの音から中央左のGの音までの音域を担当します。よってベースあり、となしでピアニストのヴォイシングが若干異なるので、それぞれ分けて解説します。

ベースなし

主にヴォーカルやサックスなどの管楽器とのデュオが想定されます。ソロピアノと同様に全音域でかなり自由に伴奏ができます。基本的には左手でベース音を鳴らして、右手もしくは両手でヴォイシングします。トップノートはメロディの音かもしくはコードトーンを弾くとフロント楽器もテーマやアドリブを弾きやすくなると思います。参考にするにはレベルが高すぎますが、Herbie Hanockのアルバム1+1のJoanna's ThemeでのWayne Shorterとの絡みは絶妙です。昔ライブを見にいきましたが、小曽根真さんと渡辺香津美さんのDuoダンディズムも素晴らしいですね。ピープルタイムではスタンゲッツとケニーバロンがデュオとしてはほぼ完璧な演奏をしています。

CM9:トップに9thはメロディーを邪魔することがある。(以下All of meの例)

9thを中音で鳴らし、トップをメロディー(コードトーン)にした。

ベースあり

ベーシストは基本的にはコードのルート音(ベース音)を弾くため、ピアニストはもう少し高音域でのヴォイシング(和音の積み重ね)をする方が、全体的に綺麗なハーモニーとなります。例えば、ピアニストは左手で3度と7度などのコードの核を押さえ、右手で1音または2音を(例えば5度の音や9の音)加えていきます。曲のテーマが弾かれている時は、テーマのメロディーを邪魔するような、テンションをトップノートにおいたヴォイシングは避けたほうが無難です。ただし、アドリブに入った時はテンションなどを足していくことで和音に厚みをもたせていきます。コードのところで勉強したUSTを利用することもできます。ピアニストは普段の練習ではおそらく1人で弾くことの方が多いため、ルートを弾かないヴォイシングに慣れていません。時々ベーシストがいることを想定してヴォイシング練習をするとよいかもしれません。

緑のベース音をベーシストが鳴らす(実際はオクターブ下)

広く、少なく

コードヴォイシングにはクローズドと呼ばれる音域の狭いものとオープンと呼ばれる音域の広いヴォイシングがあります。Bフォームはクローズド、Aフォームはオープンになりますが、伴奏ではもっと広いオープンヴォイシングが好まれます。そして和音の音数ですが、4音が基本となり、5音を使う場合はよりオープンなヴォイシングを考えなければ音が濁ってしまいます(それがよい場合もあります)。これらはベーシストの有無には関係ありません。ヴォイシングなどはBookページの伴奏テキストも参考にしてください。

C69

Cm9、青はオプション

リズム

伴奏のリズムはフォークソングの弾き語りのようにジャン、ジャン、ジャン、ジャンという拍すべてのアタマにコードは入れません(あえて入れることもあります)。基本は2拍と4拍の裏にチャッという感じで歯切れよく弾きますが、曲調によりけりなのでCDなどで模範演奏をよく聞いて雰囲気を真似ることをおすすめします。

[曲のイントロ]

多くの場合、ピアニストにとって伴奏とイントロはセットとなっています。ギターなど、他のコード楽器がいる場合はイントロはそちらに任せてもよいのですが、デュオなどでは基本的にイントロは避けては通れません。イントロはわずか数小節にも関わらず曲のテンポや雰囲気、ヴォーカルにおいては歌い出しの良し悪しを決める大事な要素で、実際イントロ虎の巻など書籍になるほどの技術が必要になります。私もイントロは苦手ですが、いくつかのポイントを紹介します。

曲のメロディーを利用

そもそもイントロで何を弾いたらよいかわからない場合、おすすめするのがその曲の後半のメロディーを弾くことです。ミディアムテンポの曲なら、例えばAll of me, Autumn leavesなどでは十分に使える方法です。

曲のコード進行を利用

曲の後半のコード進行でアドリブをします。II-V-Iのフレーズをそのまま当てはめてもよいと思います。大抵の曲は最後の1小節はテーマの最初のコードへのドミナントセブンスとなっていることが多いので、ドミナントセブンスのコードをしっかり鳴らせれば、他がちぐはぐでもなんとかなります。

D7 G-6G7

枯葉の最後の4小節目をCm7へ向かうドミナント7thとした。

テンポをしっかり出す

ジャズの曲にはそれぞれ原曲のテンポがありますが、基本は演奏者、多くの場合サックスなどのフロント楽器が決めます。指で鳴らしてもらえる場合もあれば体でリズムをとる場合、または「まかせます」など様々です。ピアニストがイントロを弾く場合に大切なのは、フロントの求めるテンポをキープすることはもちろんですが、それ以上に自分がノレるテンポを出すことが大切です。実際、フロント楽器にとっては素晴らしく複雑なコードワークで組み立てられたイントロよりも、しっかりしたリズムでシンプルな和音、そしてドミナントセブンスを鳴らしてもらった方がテーマのメロディへすんなり入りやすい、ということは多々あると思います。

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