練習プログラム

かつてあるファンがArtie Shawに、自分は以前クラリネットをやっていたけれど才能がないのでやめたと打ち明けたところ、Shawは「1日8時間の練習を10年間続けた後、才能について君と話し合おう」と答えた有名な逸話があるようです。パーカーやコルトレーン、ロリンズもそのたゆまない努力でジャズジャイアンツとなったのは誰の目にも明らかです。

しかし普通の労働者(会社員など)が1日の3分の1の時間を楽器練習に充てることは不可能に近いものがあります。できないことはないのですが、それを実行するためには尋常ではない動機が必要です。私を含め『とても普通の人々』(ベリーオーディナリーピープル)では、せいぜい60分か90分、ではないでしょうか。しかし決して悲観することはありません。パーキンソンの法則によれば、人は決められた時間内に作業を遂行することができるようです。つまり同じ仕事量でも、1時間内と決められれば1時間内に、3時間と決められれば3時間内に終わらせるようにできる、ということです。また時間はたくさんあればそれだけ量質ともにベストな仕事ができるわけではありません。時間に余裕のある学生よりも、忙しい社会人の方が難関な資格などを取得している例もたくさんあることをご存知の方も多いと思います。要するに時間は『コントロール』することができるということです。

練習時間60分のプログラム

ピアノがある程度弾けるジャズ初心者を対象にしたプログラムです。時間は60分を目安にしていますが、自分の生活スタイルに合わせて短く長くしてもらって大丈夫です。大切なことは継続すること。たとえ10分でも6日間継続した方が、1日60分練習して残りの日は練習しないよりも大きな効果があります。

はじめの10分

腕や指のストレッチをします。やりすぎないように注意して下さい。その後 ハノンバーナムなどで指の訓練を少し行います。ハノンについては1〜10までのうち1と2は必須。時間があればあと1つ苦手なものを追加します。注意点としてはハノンを弾くことが目的とならないようにしましょう。あくまで指慣らしのためのトレーニングです。

スケールとコード練習(概ね30分)

ジェイミーのII/V7/I Progressionを参考に、各調でモードケールの練習をします。具体的にはそれぞれドリアン、ミクソリディアン、イオニアンを弾きます。全調が理想なのですが、全て弾くと3分かかります。3分は音楽的にはかなり長い時間なので、半分づつ行うと良いでしょう。最初は自分のペースで、慣れてきたら付属のCDに併せて弾くと練習になります。

ピアニストの方は左手でコードを弾きながら練習すると良いですが、最初は基本コード、慣れたらルートレスヴォイシングのAフォーム、Bフォームで弾けるようになるのが理想です。左手のコードがうまく押さえられない場合は無理をせずに右手だけ弾くようにしましょう。右手ができたら今度は左手のコードだけ練習など、一度に全てをやらないことが大切です。

アレンジの提案

ミクソリディアンスケールをビバップスケールに変更して弾く練習もおすすめです。ビバップスケールはルートとb7の間にメジャー7thを挟んだもので、かなりジャズっぽいサウンドになるので是非マスターして下さい。

残り時間

スケール練習など機械的な練習はかなり大変です。よって残り時間は実際の楽曲を弾きながら練習することをお勧めします。渡辺貞夫さんのSHiroi-Nami(白い波)を使った練習法について動画では解説しています。モード的な曲で各コードが4度進行で変化していくので、スケール練習には大変有用な楽曲です。

目標設定は大雑把に

年単位で良いので自分の目標を立てましょう。例えば来年のクリスマスは家族の前でジャズっぽいクリスマスソングを弾きたい、ジャムセッションに参加して1曲だけでも弾きたい、自分のために1曲仕上げたいなど。

細かい目標設定

大雑把な目標を達成するために必要なことを1つ1つクリアしていきます。例えばクリスマスソングを弾きたい、ならば、まずテーマを単音で弾けるようになること、左手でコードを弾けるようになること、両手で弾けるようになること、そしてコードのスケールを弾ける、メロディをフェイクしたフレーズを弾ける、アドリブっぽいものを弾く、etcなど課題は山ほどあります。自分自身の現在のレベルに応じて課題をクリアしいきましょう。

一度に全てやらない

ジャズはやり始めるとやることがたくさん出てきます。特にピアノはピアノソロ、バッキング、アドリブソロ、イントロ、エンディングなどたくさんです。しかし焦らずに1つ1つのことに集中して練習してください。1週間かけてジャズの曲のテーマを弾く練習だけでもよいと思います。そのために養われた運指、筋力、神経などはその後色々な場所で応用できます。

教則本をやりきる

練習に教則本はつきものですが、あれこれ手を出さずに1冊をやりきることが重要という話はよく聞きます。確かに『やりきった』という達成感は大いにあり、ある種の自信にも繋がっています。私がやりきったと思える参考書はIntro to Blues Pianoデイブリミナ氏のDVDですが、問題なのは良い教則本は個人個人異なるということで、自分にとって最良のテキストに出会うまではある程度書籍を購入する必要があります。しかし、たくさんの教則本をつまみ食いしても無駄にはなりませんので当サイトのBookで紹介しているものを中心に検討するのもよいと思います。

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