チャーチモード
チャーチモードはグレゴリアンモード、教会旋法などと呼ばれ、8世紀頃〜16世紀頃に主流だった音階です。その後、現在普通に使われている長音階(メジャースケール)や短音階(マイナースケール)へと発展しました。モードは古い音階ですが、現代でも、特にジャズでは多用されています。
モードの種類
モードスケールは調に依存します。ここではハ長調、Cのキーで考えます。Cのキーは調号が付かない(#とかbとか)ので、音階はドレミファソラシド(CDEFGABC)となります。もしこれがFのキーならば調号はシにbが付きますので、音階はファソラシbドレミファ(FGABbCDEF)となります。
この基本の音階をアイオニアンスケールと呼びます。現代でいうところのメジャースケールです。次にこの音階、Cのキー、のレから弾き始めます。レミファソラシドレとなります。使っている音はドレミファソラシド、つまり白鍵のみとなるのですが、このスケールをDドリアンスケールと呼びます。ミから始めればEフリジアン、など、表を確認して下さい。ここでは例として音名で書きましたが、実際は2番目からスタートがドリアン、3番目からスタートがフリジアンなどと覚えるようにしましょう。こうした方が調が変わっても対応できます。モードは7種類あります。
モード(C) | 音階 |
---|---|
1.アイオニアン | C-D-E-F-G-A-B |
2.ドリアン | D-E-F-G-A-B-C |
3.フリジアン | E-F-G-A-B-C-D |
4.リディアン | F-G-A-B-C-D-E |
5.ミクソリディアン | G-A-B-C-D-E-F |
6.エオリアン | A-B-C-D-E-F-G |
7.ロクリアン | B-C-D-E-F-G-A |
モードは一見ただ単純に開始音を変えたようにみえますが、それぞれ音楽的な機能があります。ここでは各モードについて簡単に説明します。といってもすぐに理解できる話ではありませんので、参考程度にしておけば十分かと思います。
モードの特性音
モードスケールにはそれぞれ特性音と呼ばれる、いわばそのスケールを特徴づける音があります。これは英語でアヴォイド(avoid:除外)ノートと呼ばれ、八分音符以下で鳴らした方がよいということなのですが、モードの曲ではむしろ特性音を積極的に弾いた方がよいとされているのでケースバイケースで考える必要があります。特性音を意識しなければならない状況について最後に解説します。
モード(C) | 特性音 |
---|---|
1.アイオニアン | 第4音 |
2.ドリアン | 第6音 |
3.フリジアン | 第2音 |
4.リディアン | 第4音 |
5.ミクソリディアン | 第7音 |
6.エオリアン | 第6音 |
7.ロクリアン | 第2音と5音 |
アイオニアン
アイオニアンスケールは後にメジャースケールへと変化しました。よって音階としてはメジャースケールと全く同じものです。特性音は4番目の音で、これはリディアンスケールと同じです。つまり4番目の音を弾けば、そのモードがアイオニアンなのかリディアンなのかが特定される、逆にいえば、4番目の音を除外すればこの二つのスケールは全く同じものとなります。例:CアイオニアンとCリディアンはそれぞれ4番目の音がFかF#で、それ以外は全て同じ。
アイオニアンスケールはジャズの代表的なコード進行(当サイトのコード進行を参考にして下さい)であるIIm7-V7-I(ツーファイブワン)のIのコード上で使うことができます。Dm7-G7-Cという進行ならCコード上でCアイオニアンスケールを弾くという感じです。ちなみにCアイオニアンスケールの1,3,5,7番目の音の積み上げはCM7コードとなるので、Cコード上にマッチするのは当然といえば当然です。またCコード上でCリディアンを弾くというのも大変効果的です。一見、F#の音がそぐわないかと思われるのですが、案外いい感じです。一度お試しください。
ドリアン
ドリアンスケールはアドリブで多用されるモードです。ジャズのコード進行上でよく使われるIIm7-V7-IのIIm7上で弾くことのできる音階です。ドリアンスケールの1,3,5,7番目の音を積み重ねるとマイナーセブンスコードになるので、IIm7上でドリアンスケールがマッチするのは当然といえば当然です。ドリアンスケールの特性音は第6番目で、これはエオリアンと同じです。アイオニアンで説明した例と同じですが、具体的には、Dドリアンの6番目の音はFで、Dエオリアンの6番目の音はF#です。よってDドリアンを弾いているのか、Dエオリアンを弾いているのかは6番目の音を鳴らさないと判別できないことになります。逆にいえば6番目の音を鳴らさなければこの2つのスケールは全く同じ音階になります。
モードはスケールの名称(小分類)です。ドリアンスケールを表現するための音階が現在の音階には存在していません。アイオニアンスケールは長音階、エオリアンスケールは自然短音階と同じなので別の言い方が可能なのですが、ドリアンはドリアンスケールと呼ぶ以外にこれを表す方法がありません。モードが難しいと感じている方はシンプルにモードは音階の呼び名にすぎないと理解すれば良いと思います。
フリジアン
フリジアンスケールはややオリエンタルな響きがあり、このスケールに長3度の音を加えるとスパニッシュスケールというフラメンコなどで使われるスケールになります。独特な音なので、ジャズではあまり使われることはありません。とりあえず名前だけでも覚えておきましょう。
リディアン
リディアンスケールはアイオニアンスケールでも説明したのですが、4番目の音以外は全て同じです。リディアンスケールはアイオニアンスケールの4番目の音が半音上がった音階です。独特なサウンドをしています。リディアンスケールですが、IIm7-V7-IのI上でそのまま弾くのもよいですが、7番目の音をフラットさせたリディアンb7スケールとしてジャズではよく使われます。このスケールは特にドミナント進行しないセブンスコード上(Iに解決しないV7)で用いられます。動画等も参考にして下さい
ミクソリディアン
ミクソリディアンスケールもIIm7-V7-Iの進行でよく使われます。V7上で弾くことができる音階です。これもミクソリディアンスケールの1,3,5,7番目の音を積み上げるとドミナントセブンスコードという響きになるためです。特性音は7番目で、これは他のモードと競合しません。ジャズぽいアドリブを弾くためにはV7コードの攻略が不可欠です。まずはシンプルなミクソリディアンスケールでトライしてみて下さい。
エオリアン
エオリアンスケールは後に自然短音階(ナチュラルマイナースケール)へと変化しました。よってこれらは全く同じ音階です。さらにその後エオリアンは、和声的短音階、旋律的短音階へと派生していったと考えられています。
ドリアンで説明したように、エオリアンの特性音はドリアンと同じ第6番目の音です。関連動画ではAll of meを題材に、AmコードをAドリアンとみなすのか、Aエオリアンとみなすのか解説しています。よかったらご覧ください。
ロクリアン
ロクリアンも変わったスケールです。このスケールの1,3,5,7番目の音を積み上げるとm7b5(ハーフディミニッシュコード)になります。このコードはマイナー進行するIIm7b5-V7-Im7で使われます。特性音は2番目と5番目と二つあり特殊です。これも特性音が競合するスケールはありません。よってこのスケールはIIm7b5で弾くことができます。さらにこのスケールの2番目の音を半音上げて使用されるロクリアン#2というスケールもあり、やはりIIm7b5上で弾くことができます。
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